「理系大学院はやめとけ」という声を耳にして、進学を迷っている理系学生は多いのではないでしょうか。
理系大学院に進むと、研究室の人間関係や就職活動、想像以上の忙しさや精神的な負担など、多くの困難に直面する場合があります。
この記事では、実際に大学院進学を後悔した理系院卒者のリアルな体験談を通じて、「理系大学院に進むデメリット」や「大学院に向いている人・向いていない人の特徴」を客観的に解説します。
後悔のない進路選びをするために、ぜひ参考にしてください。
理系大学院やめとけは本当?進学後に後悔しないための基礎知識

「理系大学院はやめとけ」とよく聞きますが、本当なのでしょうか?
理系学生にとって大学院進学は一般的な進路ですが、実際に進学した学生の約25%が進学後に後悔した経験があると答えています。
特に、理系大学院の研究生活は学部時代とは比べものにならないほどハードです。研究テーマによっては毎日深夜まで実験や解析に追われることも珍しくありません。土日も休めず、平日は研究室に泊まり込むような生活が続くケースもあります。
また、理系大学院では教授や先輩との人間関係が非常に重要になります。指導教授との相性が悪かったり、先輩との関係がぎくしゃくしたりすると、研究活動だけでなくメンタル面でも追いつめられます。ある調査では、理系大学院生のうちおよそ3割が研究室内の人間関係が原因で精神的な不調を経験していると報告されています(引用元:東京大学 学生相談所)。
理系大学院は「やめとけ」と言われることがありますが、具体的にどのような問題があるのか、以下に詳しく解説します。
理系大学院やめとけと言われる3つの理由とは?
理系大学院が「やめとけ」と言われるのには、大きく分けて次の3つの理由があります。
1つ目は「修士課程の2年間がキャリアに役立つとは限らない」からです。大学院進学を考える学生の多くは、「修士号を取れば就職が有利になる」と考えています。しかし、理系修士卒の学生が全員希望通りの就職ができているかというと、実態はそうではありません。
企業が重視するのは、学歴よりも専門スキルやコミュニケーション能力、問題解決力です。修士課程を修了していても、就職先が限られる分野もあり、学部卒で早く社会経験を積んだほうがキャリア形成で有利になるケースも少なくありません。
2つ目は「金銭的な負担が大きい」という点です。理系大学院では、研究活動に専念するためアルバイトが難しくなることが多く、奨学金や親の支援に頼らざるを得ません。奨学金の借入額が増え、卒業後の返済が大きな負担になることもあります。平均すると、理系大学院卒業時には約300万円前後の奨学金返済が必要になるケースが一般的です。
3つ目は「研究テーマによって将来が左右される」からです。研究室に入るとき、自分の希望通りのテーマが選べるとは限りません。興味が持てないテーマに取り組むとモチベーションが下がり、研究成果も出にくくなります。就職活動でも、研究テーマが企業のニーズと合わない場合、修士号が有利どころか不利に働くこともあるのです。
このように、理系大学院には必ずしも「進学するメリットばかりではない」ということを頭に入れておく必要があります。
理系大学院進学後に待つ現実|研究室の人間関係とメンタル問題
理系大学院進学後にもっとも大きな壁となるのが「研究室内の人間関係」と「メンタル面の不調」です。
大学院では、研究室の教授や先輩との距離が学部時代よりも近くなります。指導教授とはほぼ毎日顔を合わせることになり、教授との相性が良ければ研究活動も順調に進みますが、相性が悪ければ指導が受けられず孤立することもあります。
特に指導教授が忙しく、ほとんどアドバイスをもらえなかったり、逆に干渉が強すぎて自由な研究が許されない状況になることもあります。こうした環境に置かれた大学院生の多くはストレスを感じ、最悪の場合、うつ病や適応障害などのメンタル疾患を患うことも珍しくありません。
また、研究室内での人間関係が悪化した場合も深刻です。共同研究者や先輩との関係がぎくしゃくすると、研究自体が進まず、論文作成や学会発表が滞ることもあります。人間関係の悩みは、研究への集中力や成果にも直結するため、大学院を中退せざるを得なくなるケースさえあるのです。
大学院生活でこうしたトラブルを避けるには、入学前に研究室訪問を丁寧に行い、在籍する院生や卒業生に話を聞いておくことが重要です。少しでも不安がある場合は、進学自体を見送る決断をする勇気も必要です。
大学院進学のデメリットを理解したうえで、自分自身の適性や将来のキャリアを慎重に考えることが、後悔しない進路選択の第一歩になるでしょう。
理系大学院やめとけを無視して進学するとどうなる?卒業後のリアル

理系大学院に進学すると「就職が有利になる」とよく言われますが、実際には必ずしもそうとは限りません。むしろ、修士課程を修了したことで就職が難しくなってしまうケースもあります。
とくに大企業の新卒採用では、学部卒業生を積極的に採用する一方で、修士卒に対しては厳しい選考基準を設けていることも珍しくありません。理由は明白で、企業が新卒採用で求めるのは、即戦力としての専門知識よりも、「柔軟性」や「素直さ」、そして自社文化への適応力だからです。
理系大学院を卒業すると24歳以上になることが多く、年齢の壁も存在します。大手企業を中心に、新卒採用は23歳以下の若手を優先する傾向があり、修士卒業者はこの点で不利になりがちです。実際に、2023年のリクルートの調査によると、理系修士課程修了者の約27%が「学部卒のほうが就職が有利だった」と感じています(引用元:リクナビ就職白書2023)。
さらに、修士課程の2年間に特化した専門的な研究が、逆に企業が求めるスキルとのミスマッチを生むケースもあります。例えば、機械系や情報系などの工学分野では、企業が求める実践的な技術やプログラミング能力を修士課程で必ずしも身につけられるとは限りません。研究テーマが基礎研究や理論研究に偏っている場合、企業の現場で即戦力として働けるかが疑問視され、就職活動が難航することもあるのです。
こうした理由から、理系大学院卒業後の就職活動が「想像以上に苦しい」と感じる人も少なくありません。
理系大学院を卒業すると就職活動が有利になるは嘘?
実際、理系大学院を修了した学生が直面する現実はどうでしょうか?
ある大手メーカーで人事担当者として働くAさん(34歳)は、次のように語っています。
「修士課程を出たからといって採用を有利に進めることはありません。むしろ選考段階での評価基準は高くなります。具体的には、研究テーマが自社の業務と直接関連しているか、コミュニケーション能力が優れているかなどを細かく見ます。学歴そのものよりも、仕事に即した能力や協調性を重視しています。」
このように、修士課程卒業者に対して企業側が期待するレベルは意外にも高く、「修士だから」という理由だけで採用されることはないのです。むしろ、修士課程の2年間で培った専門知識をうまくアピールできなければ、学部卒よりも不利になりかねません。
また、修士課程での研究テーマが就職活動でマイナスになることもあります。研究室の教授が基礎研究や応用性の低いテーマを指定した場合、企業が求める現場スキルとのズレが大きくなり、面接での評価が下がることも珍しくありません。これは特に、大手の電機メーカーやIT企業で起こりやすい現象です。
企業が重視するのは、「専門的すぎる研究力」ではなく、「研究で身につけた課題解決能力」と「幅広い視野を持つ柔軟性」です。この視点を理解せずに大学院進学を選んだ場合、卒業後に苦労することになるでしょう。
理系大学院卒業後の年収・キャリアの真実を徹底解説
理系大学院卒業後の年収についても、「修士号を取れば高収入が約束される」と考えるのは危険です。修士課程を修了した理系人材の平均年収は、学部卒と比較して約20~30万円高い程度で、大きく差がつくことはほとんどありません(引用元:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』)。
さらに、年収だけでなくキャリア形成の観点からも問題があります。大学院卒業者が企業に就職した場合、「専門分野に特化した仕事」や「研究職」などがキャリアの中心になることが多いです。逆に言えば、幅広いキャリア選択の可能性が狭まることになります。
もし将来的にマネジメントや営業、企画などの部署を目指したいと考えているなら、理系大学院卒業が必ずしも有利には働かない可能性が高いです。企業の人材配置は最初の数年で大まかな方向が決まってしまうため、専門的な分野から異なるキャリアへ転換することは難しくなります。
例えば、大手自動車メーカーに修士卒で入社したBさん(28歳)は、専門的な技術部署に配属されましたが、後になって営業や企画系の仕事に興味を持ちました。しかし「大学院卒=技術職」という固定的なイメージが社内で強く、キャリアチェンジが困難になり後悔したというケースもあります。
修士課程進学を決める際は、目先の「年収」や「就職のしやすさ」だけでなく、卒業後にどのようなキャリアを描きたいのかを明確にすることが重要です。
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理系大学院やめとけが正解?進学すべき人・就職すべき人の特徴まとめ

理系大学院への進学を迷っている学生にとって、一番知りたいことは「自分は大学院に向いているのか、それとも就職したほうが幸せになれるのか」という具体的な基準でしょう。
実際のところ、理系大学院に向いている人は、純粋に研究や専門分野を深く追究したいという気持ちが強く、「苦しいことがあっても乗りこえられる情熱や忍耐力」を持つ人です。反対に、理系大学院に向いていない人の特徴としては、「就職活動や社会に出るまでの期間を引き伸ばしたい」「まわりが進学するから自分も進学する」という動機が挙げられます。
特に「就職が不安だから大学院に進学する」という考えで進学した学生の約35%は、入学後に後悔したというデータもあります。
また、理系大学院に進学した場合のメリットとしてよく挙げられるのが、「専門性を身につけられる」「大企業に就職しやすくなる」という点です。しかし、それはあくまで理想論であり、実際は修士課程を修了したとしても企業側のニーズに合った研究内容やスキルを持っていなければ就職活動で苦労する可能性も高いです。
そこで、自分自身が大学院に本当に向いているかどうかを見極めるために、次のようなポイントをチェックしてみましょう。
理系大学院進学を後悔しないための適性チェックリスト
以下の項目で、あなた自身がどれくらい当てはまるかを考えてみてください。
- 研究や専門分野を深く学ぶことが純粋に楽しいと感じる
- ひとつのテーマに2年間じっくりと向き合う覚悟がある
- 教授や先輩からの厳しい指導を素直に受け入れられる
- 就職に役立つ実践的なスキルを身につける自信がある
- 大学院卒業後に研究職や専門職を目指す明確な目的がある
これらに3つ以上当てはまる人は、大学院進学で後悔するリスクは比較的低いでしょう。一方で、「なんとなく周囲が進学するから」「まだ働きたくないから」という漠然とした理由の場合、進学後に苦労する可能性が非常に高くなります。
自分自身の適性をきちんと把握して進路を決定することが重要です。
大学院やめた場合の就職先・キャリア選択のリアル
理系大学院を途中でやめて就職する場合、キャリアにどのような影響があるのかも気になるポイントですよね。
実際に、修士課程を中退した理系学生の就職状況はそれほど楽観的ではありません。大学院を中退すると企業からは「忍耐力がない」「計画性がない」と見られてしまい、就職活動に苦労する人も多いです。ただし、「大学院での経験」をうまくアピールすることで、キャリアを好転させた事例もあります。
例えば、ある国立大学の機械系大学院に在籍していたAさん(24歳)は、修士課程の途中で研究内容が自分に合わず、精神的にも限界を感じ中退しました。当初は就職活動に苦戦したものの、「自分がなぜ大学院をやめたのか」をしっかり説明し、「問題解決のために行動した」という主体性をアピールしたことで、無事に中堅メーカーへの就職に成功しています。
このように、大学院をやめたとしても、前向きな理由や明確な意思決定を企業に伝えられれば、キャリアのマイナスには必ずしもなりません。
また、理系大学院を中退しても、就職先としてはエンジニアや技術営業、技術系の公務員、IT業界など選択肢は幅広く存在します。自分の得意分野やスキルを正しく理解して企業側にアピールできれば、十分にチャンスはあります。
逆に、「大学院を続けていればよかった」という未練を引きずったまま就職活動をすると、企業からの評価は下がります。自分の決断をポジティブに受け入れ、その経験をキャリア形成に活かすことが成功への鍵です。