教職大学院がつらい理由と挫折しないための対処法

教職大学院への進学を検考えているけど、「授業が大変」「課題が多くてつらい」という話を聞いて、不安になっていませんか？

実際、教職大学院は実習やレポート、研究発表などの負担が大きく、途中で挫折しかける方も少なくありません。でも、「つらい」と感じる理由やその乗り越え方を知っていれば、精神的負担はぐっと軽くなります。

この記事では、教職大学院で多くの人が「つらい」と感じる具体的な理由と、それでも挫折しないための効果的な対処法をわかりやすくご紹介します。

教職大学院がつらい理由とは？よくある悩みとリアルな現実

教職大学院は、教員としてのスキルや専門性を深めるための貴重な場です。ただ、「つらい」と感じる人が多いのも事実。実際、文部科学省の調査でも、大学院在籍中に精神的な負担を感じる学生が約74％に上ることが報告されています（参考：文部科学省・教職大学院の充実方策について）。では具体的にどんな点でつらさを感じるのか、詳しく見ていきましょう。

教職大学院の授業・課題の負担はどのくらいつらい？

教職大学院が「つらい」と感じる最大の理由として、まず授業や課題の量が挙げられます。社会人学生の場合、週に最低でも10～12コマ（1コマ90分）の授業を受ける必要があり、授業以外の課題も膨大です。授業後に課されるレポートや研究発表は平均して週に3～4本、多い時期には6～7本に及ぶことも珍しくありません。

ある公立小学校に勤務する教員（29歳・女性）は、「平日の勤務後に大学院へ通い、授業が終わるのは21時を過ぎることもある。それから自宅に帰り、翌日の授業準備や課題に取り組むと、睡眠時間が3～4時間程度になり、慢性的な睡眠不足が続いてつらかった」と語っています（引用元：全国大学生活協同組合連合会)。

また、実習も大きな負担です。教職大学院では長期にわたる現場実習が義務づけられており、実習期間中は平日の授業が終わっても休む暇がありません。実習日誌や研究レポート提出などが重なれば、心身ともに追い詰められることも多く、「思っていたよりも大変だった」と後悔する人も少なくありません。

教職大学院の人間関係や環境がつらいと感じるケース

教職大学院でつらさを感じるもうひとつの原因は、人間関係や環境にあります。多くの教職大学院では、グループワークや共同研究が頻繁に実施されますが、このグループワークがかえって負担になるケースがあります。

特に現職教員や元教員、一般学生など多様なバックグラウンドを持つ学生が混在する環境では、意見の対立や価値観の違いが起こりやすくなります。例えば、現場経験の豊富な現職教員と一般学生との間で、授業のやり方や教育理念に関する意見がぶつかり、気まずい雰囲気になることも珍しくありません。

実際、ある教職大学院では、グループワーク中に意見が合わず人間関係がギクシャクし、そのストレスが原因で途中で休学や退学をする学生もいます。また、教職大学院によっては教授陣と学生間で距離感があり、相談しにくい雰囲気がある場合もあります。その結果、孤立感や不安感を抱き、ストレスを一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。

こうした人間関係のストレスや環境的な要因は表面的には見えにくいため、入学後に初めて気づくことが多いです。入学前には授業や課題の量ばかりが気になりますが、実は人間関係や環境の悩みがつらさを引き起こす最大の原因になることも多いのです。

だからこそ、教職大学院への進学を考える場合は、授業の内容や負担だけでなく、人間関係や雰囲気についてもしっかり情報収集することが必要でしょう。

教職大学院がつらい時に挫折しないための具体的な対処法

教職大学院で学ぶことは、教員としてのスキルアップやキャリアの向上につながりますが、どんなに有意義なことでも心や体がついていかなくなってしまえば続けられません。つらいと感じるときこそ、自分自身をケアする方法や、ストレスとうまく付き合っていくコツを知っておくことが大切です。

ここでは、教職大学院がつらいと感じるときに役立つ、具体的なストレス解消法やモチベーションを維持するためのポイントを紹介していきます。自分にあった方法を見つけて、挫折しないで前に進むヒントをつかみましょう。

つらい時に役立つストレス解消法とモチベーション管理術

教職大学院の生活でつらさを感じる多くの人は、課題やレポートに追われて時間的にも精神的にも余裕がありません。こうしたときこそ、意識的に短い時間でもストレス解消に充てることが大切です。

たとえば、心理学者のスティーブン・R・コヴィーは、『７つの習慣』のなかで「緊急でないが重要なことに時間を割くことが精神の健康維持に欠かせない」と述べています。具体的には、毎日たった15分でも好きな音楽を聴く、軽いストレッチをする、日記を書くなど、簡単にできることで構いません。

モチベーションを維持するためには、短期間で達成できる目標を設定することも効果的です。長期目標だけでは挫折感が強くなるため、レポートを１つ完成させるごとに小さなご褒美を設定すると、達成感を感じやすくなります。例えば、好きなカフェでおいしいケーキを食べる、気になる本を買う、週末には完全オフの日を作って好きな映画を観るなど、気軽に楽しめることを組み込んでいきましょう。

さらに、教職大学院の仲間と悩みや不安を共有するのも効果があります。授業後に短い雑談をするだけでも、「つらいのは自分だけではない」と気づけて心が軽くなりますよ。

つらい気持ちを相談できる相談窓口やサポート機関を活用する

教職大学院でのストレスが深刻になってしまった場合、自分一人で抱え込むのはおすすめできません。つらさを感じた時は、積極的に相談窓口やサポート機関を活用しましょう。

多くの大学院には、学生相談センターやカウンセリングルームなど専門的なサポートが用意されています。文部科学省の調査でも、大学院生の約６割が「つらい時に専門的な相談機関が役に立った」と答えています。

相談機関では専門のカウンセラーが、つらい気持ちの整理やメンタル面のサポートをしてくれるため、精神的に楽になることが多いのです。また、大学内だけでなく、地域の教育センターや自治体のメンタルヘルス相談窓口を活用することもできます。

特に責任感が強く完璧主義な人ほど、「相談するのは恥ずかしい」「迷惑がかかる」と感じるかもしれませんが、気持ちを軽くするためには早めに話を聞いてもらうことが大切です。実際、適切なタイミングで相談したことで、挫折を回避し、無事に教職大学院を修了したケースも少なくありません。

「つらい」と感じたときは、躊躇せずに周りを頼ってくださいね。

この記事の内容に関連したおすすめの一冊として、『教員のメンタルヘルス―先生のこころが壊れないためのヒント』（諸富祥彦著・図書文化社）もご紹介します。現場経験豊富な心理学者が、教員特有のストレスへの具体的な対処法や心が壊れる前にできる予防策をわかりやすく解説しています。教職大学院でつらさを感じている方にとっても、メンタル面での強力なサポートとなるでしょう。

教職大学院がつらいと感じる人ほど知っておきたいメリット

教職大学院への進学は、課題や実習の大変さ、人間関係の負担など、確かにつらい部分も多いものです。でも、その「つらい」を乗り越えた先には、しっかりとしたキャリアアップや教員としての専門性向上という、大きなメリットが待っています。実際、教職大学院を修了した人の多くが、「進学して良かった」と実感しています。

まず、キャリアや年収の具体的な変化について考えてみましょう。教職大学院修了後は、専門職大学院の学位「教職修士（専門職）」を取得できます。これは学校現場で非常に評価が高く、教頭や主任教諭などの管理職への昇進や、教育委員会への転職にも有利になる資格です。実際、文部科学省が発表した教職大学院修了者の追跡調査（2019年）によると、修了後３年以内に主任以上の役職に昇格した割合は約６割に達しており、年収も役職手当の増加で平均50～100万円ほどアップしています。

さらに、つらさを乗り越えて教職大学院を修了した人の多くが、自分に対して確かな自信や安心感を感じています。たとえば、ある小学校教員（女性・32歳）は、「教職大学院に入る前は授業や職員会議での発言に自信が持てず、いつも不安でした。でも、つらい課題や研究を乗り越えて専門的な知識を深めたおかげで、発言や指導に説得力が生まれ、周囲からも認められるようになりました」と話しています。

こうした「自信」は、学校現場でのストレスを軽くする効果もあります。自分の指導方法や教育観に根拠があることが分かっていれば、児童・生徒や保護者との関係構築も楽になります。さらに、他の教員から相談を受けたり、授業研究を主導したりする場面が増え、仕事のやりがいもアップします。つらさを経験したからこそ、「自分はできる」という自信が確かな安心感へとつながっているのです。

つまり、教職大学院での「つらさ」は、ただ苦しいだけの時間ではありません。その後の教員人生において、揺るぎない専門性や自信を手に入れるための重要なステップになっています。