「大学院に進学すると本当に生涯年収は上がるの?」「院卒が高収入になるのはなぜ?」など、進路選択で迷っている理系学生にとって、将来の年収差は大きな関心事ですよね。
実際、学部卒と院卒では生涯年収に数千万円もの差が出ることも珍しくありません。では、なぜ院卒のほうが生涯年収が高い傾向にあるのでしょうか?
この記事では、院卒の年収が高くなる明確な理由をデータとともに徹底解説。進学するメリットや、専門性がどう評価されるのかまでわかりやすくお伝えします。
院卒の生涯年収はなぜ高い?収入差が生まれる理由とは

「院卒の生涯年収はなぜ高いのか?」と疑問に感じる人は多いですよね。実際、学部卒と比べて、大学院を出た人のほうが生涯年収は数千万円も高くなるというデータがあります。しかし、すべての院卒が必ず高収入を得られるわけではなく、そこにはいくつかの重要な理由が隠されています。
ここでは、なぜ院卒のほうが生涯年収が高くなる傾向があるのか、その根拠を詳しく解説していきます。
院卒と学部卒の生涯年収の平均比較データ
まずはじめに、院卒と学部卒の生涯年収を比較したデータを見てみましょう。
厚生労働省の調査によれば、日本の一般的な学部卒の生涯年収は約2億5,000万円程度です。一方、大学院修士課程修了者の生涯年収は平均して2億8,000万円以上と言われ、その差はおよそ3,000万円以上にもなります。
特に理系分野や専門技術職、研究職の場合、この差はさらに広がり、院卒者が3億円を超えることも珍しくありません(参照:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」)。
つまり、大学院進学による生涯年収の上昇効果は、分野や職種によってかなり大きな差が出てきます。とりわけ理系や技術職の院卒者は、より専門的なスキルが求められ、収入が高くなる傾向が強いのです。
なぜ院卒の方が年収が高くなるのか?4つの要因
院卒が学部卒よりも生涯年収が高くなる理由は、以下の4つの要因が大きく関係しています。
①初任給の違い
院卒者の初任給は学部卒者よりも高い傾向にあります。たとえば、大手電機メーカーや自動車メーカーでは、学部卒者の初任給はおよそ月額22万円~23万円程度ですが、院卒者の場合は月額25万円~27万円に設定されています。年間にすると約30万円~50万円の差が初年度から生じます。この差が積み重なることで、生涯年収に大きく影響します。
②昇進・昇給のスピード
院卒者は専門的な知識や高度な課題解決力を期待され、企業内でも早期に重要な役割を与えられやすくなります。その結果、昇進や昇給のスピードが速まり、生涯年収に差が生まれます。実際、メーカーやIT企業において課長級以上の管理職になるスピードは、院卒者が学部卒者に比べて平均して3~5年早いとされています。
③高度な専門性と市場価値の向上
院卒者は大学院で高度な研究活動や専門的なスキルを習得しています。そのため、専門的な課題解決能力を持ち、企業においても即戦力として活躍できる人材と見なされます。特に、機械、化学、情報系など技術系分野では院卒者の市場価値が非常に高く、給与面で優遇されることが多くなります。
④大手企業・研究職など高収入職への就職率の違い
大学院修了者は大企業や有名企業への就職率が高く、収入が安定しやすいというメリットがあります。特に研究開発職や製品開発職など、専門性の高い仕事は院卒者が採用の中心です。
たとえば、大手自動車メーカーの研究開発部門や製薬会社の研究職では、採用者の9割近くが院卒者で占められることも少なくありません。このように、院卒はもともと高収入になりやすい職種への就職機会が多く、その結果、生涯年収も高くなる傾向があるのです。
次の章では、「院卒は本当に得なのか?進学のメリット・デメリット」を詳しく解説しますので、進路の判断材料として役立ててください。
院卒は本当に得なのか?進学のメリット・デメリットを徹底比較

「院卒のほうが生涯年収は高くなる」とよく聞きますが、実際に大学院へ進学すると2年間という時間とまとまった費用が必要ですよね。特に理系の場合、研究生活が忙しく、アルバイトの時間が限られてしまうことも多くあります。そのため、本当に院卒になることが自分にとってメリットがあるのか、慎重に考える必要があるでしょう。
ここでは、院卒になることのメリットとデメリットを具体的に整理し、あなた自身が納得して進路を選べるようサポートします。
院卒のメリットとは?収入面だけではない強み
まず、院卒の最大のメリットは生涯年収が高くなることですが、メリットはお金だけではありません。
1つ目は、キャリアアップの選択肢が広がることです。大学院では学部時代より専門性を深めるため、企業が即戦力として評価し、責任あるポジションを任される機会も増えます。たとえば、大手企業の技術職では、院卒者が管理職になる割合が学部卒よりも約2倍高いというデータもあります。
2つ目は、研究職や専門職への道が広がる点です。特に、理系の場合、企業の研究開発職は院卒以上がほとんどです。研究職は専門性を磨けば磨くほど市場価値が高まり、高収入や安定したキャリアにつながりやすくなります。また、特許や論文など、自分自身の研究成果が社会で評価されることで、自己実現につながる可能性もあります。
3つ目のメリットは、大企業や安定企業に入りやすいことです。多くの大企業は院卒者を優遇し、高い専門性を持った人材を積極的に採用しています。自動車メーカーや化学メーカーの研究開発部門などでは、院卒者の採用枠が全体の約7割以上を占めることも珍しくありません。
院卒のデメリットとは?進学を考える際の注意点
一方、院卒になることでデメリットとなることもあります。
1つ目は、大学院2年間の学費や生活費の負担です。私立大学院の場合、修士課程の2年間で約200万円~250万円ほどの学費が必要になり、生活費も合わせるとさらに高額になります。国立大学院でも2年間で約100万円以上の費用が必要で、家計への負担は決して小さくありません。
2つ目は、2年間の「機会損失」の問題です。大学院に通う間は本来なら得られるはずの社会人経験や収入を犠牲にすることになります。たとえば学部卒ですぐ就職した場合、2年目には年収400万円前後の給与をもらえることも多く、その2年分の収入約800万円を機会損失として考える必要があります。この差は将来的に確実に取り戻せるとは限りません。
3つ目は、大学院に行けば必ず年収が上がるとは限らないということです。実際、文系や一部の分野では院卒でも給与水準が学部卒と変わらないケースがあります。また、就職市場の需要と合っていない研究テーマを選ぶと、逆に就職が難しくなり、望んだような収入が得られない可能性もあります。
これらのメリットとデメリットを自分の状況に当てはめ、収入やキャリア形成、人生設計をしっかり考えたうえで進学の判断をするとよいでしょう。
院卒と学部卒、結局どちらを選ぶべき?最適な進路の考え方

「院卒のほうが生涯年収は高い」と聞くことが多いですが、実際には大学院進学がすべての人にとってベストとは限りません。とくに理系の大学生にとっては、「周囲の友人が院に行くから」といった理由で進学を決めてしまう人もいますよね。でも本当に大切なのは、自分が将来どんな働き方をしたいか、どんな生活を送りたいのかを具体的にイメージして決めることです。
ここでは、大学院に進学したほうが向いている人と、学部卒で早めに就職したほうが向いている人の特徴を解説します。あなたの将来設計に役立ててください。
どんな人が大学院に進学すべきか?向いている人の特徴
大学院に進学したほうが向いているのは、「研究職や専門職に就きたい」という気持ちが明確な人です。とくに、企業や大学などで専門性を活かした高度な研究や技術開発をしたい人にとっては、大学院進学は必須といえます。大手自動車メーカーや製薬会社、IT企業の研究職は、ほとんどが院卒者を採用しているからです。
また、大手企業や安定した有名企業への就職を望む場合も、院卒は有利です。たとえば、有名企業の技術職採用では、院卒者が全体の7~8割を占めています。これらの企業は、院卒者に対して初任給や昇進スピードを優遇しているため、院を修了することで、キャリアアップの可能性が大きく広がるでしょう。
さらに、「学部の4年間では専門性に自信が持てなかった」「もっと専門分野を深く学びたい」と考えている人にとっても、大学院進学はプラスになります。大学院の2年間で研究や論文執筆にじっくり取り組むことで、自分自身の強みを作り、市場価値を高めることができるからです。
学部卒の方が適している人とは?進学を迷う場合の判断基準
一方、学部卒のほうが適しているのは、「いちはやく社会に出て経験を積みたい」と考えている人です。2年間の大学院生活は、研究スキルや専門性を深めることができますが、そのぶん社会人としての経験が遅れます。とくに営業職やサービス業、現場での実務経験が重視される仕事に就きたい人にとっては、早く社会に出て経験を積んだほうが、市場価値が高まるケースもあります。
また、企業での研究や専門職よりも、「実務的な仕事が好き」「仕事を通じて現場で活躍したい」と考える人は、学部卒でも十分キャリアアップができます。中小企業やベンチャー企業など、実力主義の環境では、2年間の早い社会人経験が昇進や給与アップにつながることも多いのです。
さらに、大学院に進学すると、経済的な負担や時間の負担も発生します。私立大学の修士課程なら2年間で200万円以上、国立でも100万円以上の学費がかかります。これらのコストを考えると、早めに就職してキャリアをスタートしたほうが人生設計に合う人もいます。
自分の性格や将来のビジョン、経済状況を総合的に考えて、学部卒と院卒のどちらがあなたに合うのか、慎重に判断するとよいでしょう。
まとめ
大学院に進学すると、生涯年収が数千万円も高くなることが多く、その理由は「初任給が高い」「昇進が早い」「専門性が評価されやすい」「大手企業や研究職に就きやすい」といった要因があります。ただし、すべての院卒が高収入になるわけではありません。
院卒のメリットは年収面だけでなく、大手企業への就職やキャリアの選択肢が広がる点にもあります。一方、学費の負担や2年間の機会損失など、進学のデメリットもあるため、自分のキャリア志向や人生設計に合わせて慎重に判断することが重要です。
研究職や専門職志望なら大学院進学が有利ですが、早く社会経験を積みたい実務志向の人は、学部卒でも十分なキャリアを築けます。あなたの理想の働き方やライフプランをよく考え、自分にとってベストな進路を選んでくださいね。