看護師として働きながら、ふと「このまま現場で働き続けるだけでいいのかな?」と感じたことはありませんか?
キャリアアップや専門性の向上、将来の働き方を見直す中で「大学院進学」という選択肢が気になる方も多いのではないでしょうか。
しかし、「進学して本当に意味があるの?」「費用や年収への影響は?」など、疑問や不安もつきものです。
本記事では、看護師が大学院に進学することで得られる具体的な5つのメリットを、進路・年収・働き方・専門性・将来性といった視点からわかりやすく解説します。
進学を考え始めたばかりの方も、明確な目的を探している方も、この記事を読めば「自分にとっての進学の意味」がきっと見えてきますよ。
看護師が大学院に進学するメリットとは?キャリアと働き方の可能性を広げる選択肢

看護師として数年経験を積んだあと、「このまま現場だけで働き続けるべきか?」と悩む方は少なくありません。そんな時、選択肢の一つとなるのが大学院進学です。
専門性の追求だけでなく、キャリアアップやライフスタイルの転換にもつながる道。この記事では、看護師が大学院に進む5つの明確なメリットを中心に、今後の働き方や年収、職種の広がりについて詳しく解説していきます。
大学院進学で得られる5つのメリットを徹底解説
看護師が大学院へ進学することには、単なる学歴アップを超えた多くのメリットがあります。ここでは、代表的な5つのポイントを深堀りしていきます。
① 専門看護師・認定看護師、教育職・研究職などキャリア選択の幅が広がる
大学院で専門的な分野を学ぶことで、臨床現場だけでなく教育・研究・行政といった多彩なキャリアパスが開かれます。特に看護学専攻で修士課程を修了すると、専門看護師や認定看護師の資格取得に必要な知識・経験が備わり、保健師や助産師とのダブルライセンスを目指す人もいます。
たとえば、大学院でがん看護を専攻し、専門看護師となった人は、地域医療センターや大学病院のがん看護外来で、患者指導・ケアプランの構築などに携わっています。教育職を目指す場合、看護学部の大学教員や専門学校の講師といった道もあり、現場で培った実践知を次世代に伝える立場になれます。
② 管理職や公的機関での役職への昇進が目指せる
厚生労働省や自治体の保健政策に関わる看護師の多くは、修士号または博士号を持っています。大学院で「看護管理」「地域保健」「公衆衛生」などを学んだ経験は、政策立案や病院経営の中核を担う管理者としてのキャリア形成にも有利です。
また、病院内でも看護部長や看護師長など、組織マネジメントを担うポジションは、大学院での知識や論理的思考が大きく評価される傾向にあります。
引用:[日本看護協会]
③ 年収アップや収入の安定が見込める職種につながる
看護師の平均年収は約490万円(厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査)ですが、専門看護師や大学教員、看護系研究員といった職に就くと、年収600〜700万円以上も珍しくありません。さらに、常勤教員であれば土日休み・夜勤なし・長期休暇ありといった、生活の安定も得られます。
単純な収入だけでなく、「心身のバランスを保ちながら、長く看護に関わっていたい」という価値観を持つ方にとっては、大学院進学がライフキャリア全体を見据えた有効な選択肢になります。
④「看護師=現場だけ」という固定観念からの脱却
日本では「看護師=病院勤務」のイメージが根強いですが、実際には産業保健師、大学研究員、企業の医療顧問など、看護師の資格を活かせる場はどんどん広がっています。大学院に進学することで、「現場」以外の選択肢に触れる機会が増え、視野が大きく広がるのが大きな特徴です。
また、研究活動や論文発表を通じて看護を“科学”として考える視点も身につくため、現場に戻った際もより根拠に基づいた実践(EBN)ができるようになります。
⑤ 働き方の柔軟性やワークライフバランスの実現
大学院修了後、臨床から教育や研究職へ転職した人の多くが、「夜勤がなくなり、生活リズムが整った」「子育てと両立できる働き方ができた」と語っています。
たとえば大学の教員職では、年間授業スケジュールがあらかじめ決まっており、長期休暇も取得しやすいのが特徴。看護師として働きながら大学院に通い、家庭とのバランスを重視したキャリアを実現している人も少なくありません。
看護師が大学院に行くべきタイミングとは?ライフプランに合わせた判断基準
進学に適した時期は、人によって異なります。ここでは、よくある進学タイミングと、その背景についてご紹介します。
① 20代後半〜30代前半での進学が多い理由
看護師としての臨床経験を数年積んだ20代後半から30代前半は、最も進学希望者が多い層です。理由は、仕事にも慣れ、自分の得意分野や興味が見えてくる時期だから。
また、このタイミングで大学院に進学すると、修了後も十分なキャリア時間が残されており、長期的な展望を描きやすいのも大きなメリットです。
② 臨床経験何年目がベスト?
大学院の受験資格には「臨床経験◯年以上」といった明確な規定はないものの、実際には3〜5年程度の臨床経験を持っていると、志望理由書や研究計画書に現場での課題意識や疑問をしっかりと盛り込めるため、合格率が高まる傾向にあります。
また、研究や教育職を志すなら、現場のリアルな視点が強みになるため、ある程度の経験は大きな武器になります。
③ 結婚・出産とキャリアのバランスをどう考えるか
進学を考える時期に、結婚や出産といったライフイベントが重なることもあります。だからこそ、夜間・通信制・社会人コースなど、柔軟に学べるプログラムのある大学院を選ぶ人が増えています。
最近では、育児支援制度が整っている大学や、オンライン講義を導入している学部も増加傾向にあり、家族との時間を大切にしながら学びを続けることが可能になっています。
看護師が大学院進学で目指せる未来と年収のリアル

大学院進学は、単なるスキルアップにとどまりません。修了後には、教育職や研究職、行政職など、臨床とは異なる多様なキャリアが広がっています。
「本当に大学院で年収は上がるの?」「進学後にどんな仕事があるの?」といったリアルな疑問に答えながら、実際にキャリア転換を果たした人の事例も交えて、将来像を具体的に描いていきます。
大学院修了後に就ける職種と仕事内容の違い
大学院を修了した看護師の進路は、臨床以外にも多岐にわたります。ここでは、代表的な3つの職種について、それぞれの仕事内容と特徴をご紹介します。
● 大学や専門学校での看護教育者
大学院で「看護教育学」や「教育方法論」などを学ぶと、大学・短大・専門学校の看護学教員として教壇に立つ道が開けます。授業では「基礎看護学」「地域看護学」「精神看護学」などの講義を担当し、看護実習の指導や学生の論文指導も業務の一部となります。
文部科学省によると、大学教員の要件として修士号またはそれに準ずる研究業績が求められることが多く、看護学研究科などの修士課程修了は強力なアドバンテージです。看護師としての実践経験が豊富であれば、教員としてもよりリアルな授業が展開でき、教育現場での信頼も厚くなります。
● 看護研究職や公的研究機関での勤務
研究者としての道を歩む看護師も増えています。大学院では、臨床課題をベースにした研究テーマを設定し、論文作成や学会発表を経験するため、研究職への下地がしっかりと養われます。
たとえば、大学病院の研究部門や公的な医療研究機関、厚労省系の保健研究プロジェクトなどに所属することで、現場にフィードバックできる知見を生み出す役割を担えます。医療技術の進化や高齢化社会の課題に対して、看護の視点から政策や医療現場に影響を与える仕事です。
また、看護研究職は夜勤がなく、定時での勤務が基本であり、ワークライフバランスを重視する人にも人気があります。
● 看護師長、看護管理者などマネジメント系職種
大学院で「看護管理学」「医療制度論」「人的資源管理」などを学ぶと、**病院内でのマネジメント職(看護師長・副看護部長・看護部長など)**への昇進が現実的になります。
たとえば500床規模の総合病院では、看護師長の平均年収が約600万円〜700万円程度とされ、医療チーム全体のマネジメントやスタッフ育成、予算管理といった重要業務を担います(参考:『日本看護管理学会誌』Vol.28, No.1, 2024)。
現場での実践力に加え、経営的視点・制度理解・倫理観を持つリーダーが求められる今、大学院での学びがその土台となります。
大学院卒看護師の年収の目安と将来性
大学院進学で得られる資格や役職によって、年収や働き方がどう変わるのかを、具体的に見ていきましょう。
● 臨床と教育・研究職の年収の違い
看護師として一般病院に勤める場合の平均年収は、全国でおよそ490万円前後(厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査)ですが、大学教員や専門看護師として働く場合、年収600〜750万円程度になるケースもあります。
大学の専任教員(准教授クラス)であれば、年収800万円を超えることもありますし、夜勤や不規則勤務がないため、収入の安定性や生活の質が高まります。
特に、専門看護師・認定看護師としての臨床活動を行う場合は、診療報酬の加算対象にもなるため、病院からの評価や待遇にも良い影響を与えます。
● キャリア後半に安定と上昇が見込める理由
看護師のキャリアは、年齢とともに体力的な負担が増していく職種です。大学院での修士号取得は、将来**臨床以外の働き方を手に入れる“セーフティネット”**になります。
教育や研究職は、定年近くまで続けやすく、再雇用や大学非常勤講師といった選択肢も広がります。また、管理職への登用も視野に入るため、キャリアの後半でも年収を落とさず働ける可能性が高まります。
さらに近年では、企業や海外の医療現場からも大学院修了者の知識と実践力が評価される傾向にあり、看護のプロフェッショナルとしての価値が広がり続けています。
看護師が大学院を目指す前に知っておくべき準備と現実的な課題

魅力的な進学のメリットがある一方で、「費用は?」「仕事と両立できるの?」「何を勉強するの?」といった現実的なハードルも存在します。
ここでは、進学に必要な準備、学費や時間、働きながらの通学方法など、一歩踏み出すために知っておきたいポイントを網羅的に解説します。
大学院受験のために必要な準備とスケジュール
看護師が大学院を目指すには、通常の入試対策に加えて、現場経験をふまえた志望理由や研究テーマの整理が不可欠です。ここでは、実際に求められる準備内容とスケジュール感についてご紹介します。
● 願書・志望動機・研究計画書の作成
多くの看護系大学院では、出願時に「志望動機書」や「研究計画書」の提出が求められます。
これらは、**なぜ進学したいのか(動機)・どの分野をどう研究したいのか(計画)**を論理的かつ具体的に示す書類で、面接時の重要な判断材料にもなります。
たとえば、「臨床現場で高齢患者の終末期ケアに疑問を感じたため、看取りに関する実証的研究を行いたい」といった具体性があると、研究者としての適性が評価されやすくなります。
また、看護学研究科などでよく求められる研究テーマの例としては、「地域包括ケア」「精神看護」「認知症ケア」「患者とのコミュニケーション支援」などが挙げられます。
● 筆記試験・面接・入試の流れと時期
筆記試験は、英語(専門文献読解)と小論文(看護に関するテーマ)の2科目が主流です。英語では「看護理論」「ケアマネジメント」「健康支援」などに関する英文読解が課され、小論文では、社会課題や現場課題への自分の考えを論述します。
入試は**年1回(秋〜冬)**に行われる大学が多く、出願から試験、合格発表までに2〜3か月を要するため、出願の半年前から準備を始めるのが理想的です。
また、研究室訪問や指導予定教員との事前面談を求める大学も多いため、早めの情報収集が合格の鍵になります。
>参考:[日本看護系大学協議会]
学費・奨学金・働きながら通う方法のリアル
大学院進学を考える上で最も現実的な課題のひとつが「お金」と「時間」です。ここでは、学費の相場や経済的サポート、仕事と学業の両立の具体策をご紹介します。
● 国公立・私立大学の学費相場
看護系大学院の2年間の総学費は、国公立大学で約100万円〜130万円、私立大学では180万円〜300万円程度が相場です。
このほか、実習費・教材費・通学交通費などを含めると、さらに年間10〜20万円程度の出費を見込む必要があります。
ただし、看護学専攻の多くの大学院では学費減免制度や授業料分納制度も用意されており、経済的なハードルを下げる取り組みが進んでいます。
● 看護師向け奨学金や教育訓練給付金の活用法
社会人看護師が進学を考える際に活用できる支援として、日本学生支援機構の奨学金(第一種・第二種)、地方自治体や病院組織が提供する看護職向け奨学金があります。
また、条件を満たせば厚生労働省の「専門実践教育訓練給付制度」が利用可能で、対象講座であれば最大168万円(授業料の70%)が支給されるケースもあります。
これは実質的に学費の大部分をカバーできる制度であり、特に社会人経験がある方にとって非常にメリットの大きい制度です。
>出典:[厚生労働省「教育訓練給付制度」]
● 夜間・社会人向けコースの活用術
働きながら通学するための制度も充実してきています。たとえば、夜間授業・週末集中講義・オンライン併用型など、社会人向けにカスタマイズされたプログラムを採用する大学が増加中です。
「東京医科歯科大学」や「名古屋市立大学」などは、働きながら進学を目指す人を想定した教育課程(前期課程)を用意しており、夜勤明けや公休に通学できる時間割設計になっているのが特徴です。
また、「職場の理解」を得るために、**病院との進学支援制度(進学後に戻ることを条件に学費を補助する制度)**を活用する方も多く見られます。これは人材育成を重視する病院が導入している制度で、休職扱いで通学できるケースもあるため、まずは上司や人事部との相談をおすすめします。
まとめ
看護師としてのキャリアに迷いを感じたとき、「大学院進学」という選択肢は、将来の働き方や生き方を見直す大きなチャンスとなります。専門看護師や教育職、研究職、管理職など、臨床以外にも多彩なキャリアが広がり、年収アップやライフスタイルの改善も期待できます。
特に、大学院での学びは単なるスキルアップではなく、「現場だけではない看護師の新しい価値」を発見するきっかけにもなります。進学のタイミングとしては20代後半〜30代前半が多く、臨床経験が3〜5年あると合格や進学後の適応もしやすい傾向にあります。
一方で、費用や学業との両立、入試準備などの課題も無視できません。ですが、奨学金制度や教育訓練給付金、夜間・オンライン対応の社会人向けコースなど、現代の制度を上手に活用すれば、現実的なハードルは確実に乗り越えられます。
看護師として今後のキャリアに迷いがある方にとって、大学院進学は「視野を広げ、自分らしい働き方を見つけるための有効な一歩」です。知識と経験を再構築するこの挑戦が、あなたの未来に大きな可能性をもたらしてくれるはずです。